2012年3月15日 STAP細胞に関する理研の記者会見(3月14日)について思う。 ・論文に改変やコピペがあって信頼できない ・研究のチェック体制の見直し ・STAP細胞の存在の他研究機関の検証を待つ というのが、現状把握と今後あるべき基本的な方向であろう。 ★電気泳動という方法について 改変データの典型例として、「レーンが切り貼りされている」と紹介され、多くの方々が見ることになった「電気泳動」という技術とはどのようなものでしょうか? 電気泳動にはタンパク質(SDS−PAGE)とDNAのものがありますが、DNAのほうで説明します。 DNAにはA・T・G・Cの4文字(塩基)が配列している遺伝情報(塩基配列)があります。この暗号の中のある塩基配列を見分けて切断する「制限酵素」があります。 たとえばEcoRIという制限酵素はGAATTCという配列を見分けて切断します。EcoRI処理するとDNAにはところどころにGAATTCの配列があるので、その配列ごとにDNAが切断されDNA断片ができます。 その断片の長さは1000塩基以上の長さが多いので 1000塩基(base)のことをKb(キロベース)といい、私たちが日常生活で「市役所まで3q」と距離を表現するように、研究者は「このDNA断片長は3kb(3000塩基)だ」という感じで議論します。 さて、同じ人(個体)の細胞からのDNAならば全く塩基配列は同じことが基本なので、同じ制限酵素での切断断片長は同じになります。 ところが違う人のDNAは塩基配列が異なり、切断断片長が異なることがあります。 この断片の長さの違いを「電気泳動」と手法で分析し、「バントパターン」とい言われる「バーコード」のような帯のパターンとして分析するわけです。 DNAは水溶液中で背骨部分のリン酸が電離しー電荷を帯びているので、DNA溶液の両極に+極と−極を置くと、+極にひきつけられていきます。その移動の通り道をアガロース(寒天)などで作ったもの(食パンにはさむスライスチーズのような大きさ・形)を配置し、電場をかけたものが電気泳動で、数十分電場をかけると、DNA断片はその長さに応じて移動します。長い断片は移動しにくく根元(図では上)にとどまり、短い断片は移動しやすく先端(図では下)まで行くのでそのバントの位置の差が出てくるわけです。 たとえば健常遺伝子ではGAATTCが6kbの位置にあり、中間の4Kbの位置に GAAT「C」C(EcoRIは切断せず)があったとし、これが疾患遺伝子では4Kbの位置の塩基配列がGAATTC(EcoRIが認識切断する配列)となりこれが疾患に関与するとします。 図では切断箇所1・2カ所で説明しましたが、実際はさらに多くの切断箇所があり、その間の制限酵素認識箇所の位置に違いにより「バーコード的パターン」でDNAの塩基配列の違いを分析できるわけです。 今後、ニュースをご覧いただくときのご参考にください。 |