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(第87回定時株主総会開催ご通知添付書類) 事業報告(平成22年4月1日から平成23年3月31日まで) 1.企業集団の現況に関する事項 (1)事業の経過及びその成果 平成22年度のわが国経済は、輸出や生産活動に持ち直しの動きがみられたものの、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況で推移しました。 東京電力グループにおきましては、平成19年の新潟県中越沖地震以降の厳しい経営環境を克服するため、被災した柏崎刈羽原子力発電所の復旧に取り組むとともに、業務運営全般におけるコストダウンに努めてまいりました。また、将来の成長・発展に向けて、新たな中期経営方針「東京電力グループ中長期成長宣言 2020ビジョン」を策定するとともに、公募増資による資金調達を実施するなど、その実現に向けた取り組みをすすめておりました。 こうしたなか、本年3月11日、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震が発生し、当社におきましても、福島第一及び福島第二原子力発電所をはじめ、火力発電所や流通設備等が大きな被害を受けました。なかでも、福島第一原子力発電所では、史上稀に見る巨大な地震や津波の影響により電源が失われたことなどから原子炉を冷却することができなくなり、原子炉建屋の爆発や放射性物質の外部への放出という重大な事故が発生いたしました。この結果、発電所周辺地域の方々に避難していただかざるを得なくなるとともに、農畜産物・水産物に出荷制限が課されるなど、極めて深刻な事態を引き起こすこととなりました。 また、この地震や津波により当社の発電所等が大きな被害を受け、供給力が需要を大幅に下回る見込みとなったことから、不足の大規模停電を回避するためのやむを得ない措置として、多くのお客さまに計画停電をお願いさせていただきました。 地震発生以降、当社は、国や自治体をはじめ多くのみなさまのご支援・ご協力を仰ぎながら、福島第一原子力発電所の原子炉への注水や電源の復旧など、事故の拡大防止と事態収束に向けた取り組みを全力ですすめております。また、当社の使命である安定供給を果たすため、供給力の確保に最大限取り組んでおります。 当年度の連結収支につきましては、3,176億円の経常利益を確保したものの、福島第一原子力発電所の事故の収束に要する費用や同発電所1号機から4号機の廃止に関する費用をはじめとする特別損失を1兆776億円計上したことに加え、繰延税金資産の取崩しに伴い法人税等調整額が増加したことなどから、1兆2,473億円の当期純損失となりました。 当年度の期末における配当につきましては、以上のような業績に加え、今後も極めて厳しい経営環境が続くと見込まれることから無配とさせていただきました。株主のみなさまには深くお詫び申し上げますとともに、なにとぞご理解を賜りますようお願い申し上げます。 事業別の業績(事業間の内部取引消去前)につきましては以下のとおりとなりました。 a.電気事業 当年度の当社の販売電力量は2,934億kWhとなり、前年度を4.7%上回りました。この内訳として、まず自由化の対象外である「電灯」(主にご家庭用)及び「電力」(主に商店・小規模工場用)についてみますと、記録的な猛暑の影響により冷房需要が大幅に増加したことなどから、「電灯」は7.6%増の1,034億kWh、「電力」は6.9%増の122億kWhとなりました。また、自由化の対象である「特定規模重要」(主に大規模店舗・事務所ビル・工場用)につきましては、猛暑の影響に加え、生産活動の持ち直しにより産業用需要が増加したことなどから3.0%増の1,778億kWhとなりました。 売上高につきましては、販売電力量が増加したことなどから、前年度に比べ7.0%増の5兆646億円となりました。一方、営業費用は、人件費や減価償却費の減少等があったものの、原油価格の上昇等により燃料費が増加したことなどから5.0%増の4兆7,104億円となりました。この結果、営業利益は3,541億円となりました。 b.情報通信事業 売上高は、子会社のソフトウェア開発事業における売り上げが増加したことなどから、前年度に比べ7.6%増の1,032億円となりました。一方、営業費用は5.2%増の940億円となりました。この結果、営業利益は91億円となりました。 c.エネルギー・環境事業 売上高は、当社のガス事業における売り上げが増加したことなどから、前年度に比べ8.1%増の3,845億円となりました。一方、営業費用は8.2%増の3,616億円となりました。この結果、営業利益は229億円となりました。 d .住環境・生活関連事業 売上高は、子会社の不動産事業における売り上げが減少したことなどから、前年度に比べ0.5%減の1,328億円となりました。一方、営業費用は0.5%減の1,206億円となりました。この結果、営業利益は121億円となりました。 e.海外事業 売上高は、海外子会社の発電事業における売り上げが減少したことから、前年度に比べ7.3%減の140億円となりました。一方、営業費用は19.8%減の140億円となりました。この結果、営業利益は26百万円となりました。 【電気事業】 売上高 50,646億円/営業費用 47,104億円/営業利益 3,541億円 【情報通信事業】 売上高 1,032億円/営業費用 940億円/営業利益 91億円 【エネルギー・環境事業】 売上高 3,845億円/営業費用 3,616億円/営業利益 229億円 【住環境・生活関連事業】 売上高 1,328億円/営業費用 1,206億円/営業利益 121億円 【海外事業】 売上高 140億円/営業費用 140億円/営業利益 0億円 【内部取引消去】 売上高 △3,307億円/営業費用 △3,319億円/営業利益 11億円 【合計】売上高 53,685 億円/営業費用 49,689億円/営業利益 3,996億円 (注)1億円未満を切り捨てて表示しているため、海外事業の営業利益につきましては0億円と記載しております。 (2)対処すべき課題 福島第一原子力発電所の事故が収束していないことに加え、今後、原子炉等の安定化や事故の被害者の方々への補償に多額の資金が必要となるなど、東京電力グループは、かつて経験したことのない重大な危機に直面しております。当社といたしましては、グループの総力を挙げて以下の施策を実行することによりこの危機を克服し、株主のみなさまの期待に応えるよう努めてまいる所存であります。 a.原子力事故の一日も早い収束 当社は、原子炉及び使用済燃料プールの安定的冷却状態を確立し、放射性物質の放出を抑制することをめざして「福島第一原子力発電所事故の収束に向けた道筋」を策定いたしました。このなかで、当社は、放射線量が着実に減少傾向となっていること(ステップ1)、放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられていること(ステップ2)という二つの目標を設定しており、ステップ1については7月中旬を、ステップ2についてはステップ1終了後3〜6ケ月程度を目標達成の目安としております。さらに、各ステップにおける取り組みを、原子炉及び使用済燃料プールの「冷却」、放射性物質の放出の「抑制」、「モニタリング・除染」、「余震対策等」、作業員の生活・職場の「環境改善」という五つの分野に分類したうえで、それぞれに目標を設定し、諸対策を同時並行で進めているところであります。当社といたしましては、これらの取り組みに持てる力のすべてを注ぎ込み、事故で避難されている方々の一日も早いご帰宅を実現するとともに、国民のみなさまに安心して生活していただけるよう全力を尽くしてまいる所存であります。 また、今回の地震と津波の経験を踏まえ、緊急時の電源確保や防潮堤の設置などの安全確保対策を早急に実施するとともに、非常災害に対するリスク管理体制等について検証を行ってまいります。 b.原子力事故により多大なご迷惑をおかけしている方々への対応 このたびの事故により多大なご迷惑をおかけしている方々に対するお詫びや事故の収束に向けた取り組みについてのご説明等を丁寧に実施するとともに、避難場所における支援活動などに引き続き誠心誠意取り組んでまいります。 また、事故により被害を受けられた方々への補償につきましては、国が設立する機構が当社に対して資金援助する一方で、当社は機構に対し毎年の事業収益等を踏まえた負担金を支払うことなどを定めた支援の枠組みが本年5月に策定され、今後法制化されることとなっております。当社といたしましては、この枠組みのもと、事故の被害者の方々に対し公正かつ迅速な補償を実施してまいる所存であります。 c.安定供給の確保 今回の地震や津波により当社の発電所等は大きな被害を受けており、今後も厳しい需給状況が続くことが想定されます。当社といたしましては、被災した火力発電所の復旧やガスタービン発電設備等の新規電源の設置、他の電力会社からの電力購入など供給力確保に全力で取り組むとともに、節電や需給調整契約ご加入のお願いなど需要面の対策を着実に実施し、安定供給を確保してまいります。 d.経営の抜本的な合理化、投資・費用削減の徹底 東京電力グループが直面している極めて厳しい経営状況を踏まえ、これまでの事業運営を抜本的に見直し、投資・費用削減と資金確保に向けた取り組みを実行してまいります。具体的には、電気事業の遂行に必要不可欠な業務を厳選したうえで、投資・費用削減を徹底するとともに、保有する資産の売却や事業の整理、組織・グループ体制のスリム化を早急に検討・実施してまいります。 |