個別注記表(平成22年4月1日から平成23年3月31日まで)

【継続企業の前提に関する注記】
 東北地方太平洋沖地震により被災した福島第一原子力発電所の事故等に関する原子力損害について、わが国の原子力損害賠償制度上、当社は原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年6月17日 法律第147号。以下「原賠法」という)の要件を満たす場合、賠償責任を負うこととされている。従って、当社の財務体質が大幅に悪化し継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在している。
当社としては、原子力損害の原因者であることを真摯に受け止め、被害を受けられた皆さまへの補償を早期に実現するとの観点から、国の援助をいただきながら原賠法に基づく補償を実施することとし、誠意をもって補償するための準備を進めている。
当社は原子力事故の収束と安全性の確保、電力の安定供給を確保するための設備投資、高騰する化石燃料の手当等に相当な資金が必要となる一方で、社債の発行及び金融機関からの借入等の資金調達も極めて厳しい状況にあることを踏まえ、こうした補償を確実に実施するために、原子力経済被害担当大臣に対し原賠法第16条に基づく国の援助の枠組みの策定をお願いした。
それに対して、政府より「東京電力福島原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する政府の支援の枠組みについて(平成23年5月13日 原子力発電所事故経済被害対応チーム 関係閣僚会合決定)」が公表された。この枠組みでは、当社は被害を受けられた皆さまに対し、新設される支援組織(以下「機構」という)から必要な資金の援助を受け、責任をもって補償を行うこととされている。また、電力の安定供給の維持及び金融市場の安定等を考慮し、当社は機構に対し毎年の事業収益等を踏まえて設定される特別な負担金を支払うこととされている。当社は徹底した経営合理化による費用削減や資金確保に取り組み、この枠組みの中で賠償責任を果たしていく予定である。しかし、枠組みの詳細については今後の検討に委ねられていることや、立法化については今後国会での審議が必要となることを踏まえると、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる。
なお、計算書類は継続企業を前提として作成しており、継続企業の前提に関する重要な不確実性の影響を計算書類に反映していない。

【重要な会計方針に係る事項に関する注記】
1.資産の評価基準及び評価方法
(1)長期投資のうちその他有価証券
時価のある有価証券は、決算日の市場価格等による時価法(売却原価は移動平均法)により評価し、その評価差額は全部純資産直入法によっている。
時価のない有価証券は、移動平均法による原価法によっている。

(2)関係会社長期投資のうち有価証券
移動平均法による原価法によっている。

(3)たな卸資産
主として、収益性の低下に基づく簿価切下げを行う総平均法による原価法によっている。

2.固定資産の減価償却の方法
有形固定資産は定率法によっている。
無形固定資産は定額法によっている。
なお、有形固定資産には特定原子力発電施設の廃止措置に係る資産除去債務相当資産を計上しているが、当該廃止措置に係る費用の計上方法については、4.原子力発電施設解体費の計上方法に記載している。

3.引当金の計上基準
(1)退職給付引当金
従業員の退職給付に備えるため、当事業年度末における退職給付債務及び年金資産の見込額に基づき計上している。
数理計算上の差異は、発生した事業年度から3年間で定額法により計上している。

(2)使用済燃料再処理等引当金
核燃料の燃焼に応じて発生する使用済燃料(具体的な再処理計画を有しない使用済燃料を除く)に対して、その再処理等に要する費用に充てるため、当該費用の現価相当額(割引率1.5%)を計上する方法によっている。
なお、平成16年度末までに発生した当該使用済燃料の再処理等に要する費用の見積額のうち、平成17年度の引当計上基準変更に伴い生じた差異は電気事業会計規則附則(平成17年経済産業省令第92号)第2条の規定により、平成17年度より15年間にわたり営業費用として計上することとしており、平成31年度まで毎期均等額30,560百万円を計上する。また、電気事業会計規則取扱要領第81に基づき、前事業年度末の未認識数理計算上の差異のうち1,013百万円を当事業年度の営業費用として計上しており、当事業年度末の未認識数理計算上の差異(1,873百万円)については、翌事業年度から再処理の具体的な計画を有する使用済燃料が発生する期間にわたり営業費用として計上する。

(3)使用済燃料再処理等準備引当金
具体的な再処理計画を有しない使用済燃料に対して、その再処理等に要する費用に充てるため、当該費用の現価相当額(割引率4.0%)を計上する方法によっている。
なお、東北地方太平洋沖地震により被災した福島第一原子力発電所1〜4号機の装荷核燃料に係る処理費用を含んでいる。

(4)災害損失引当金
イ 新潟県中越沖地震による損失等に係るもの
新潟県中越沖地震により被災した資産の復旧等に要する費用または損失に備えるため、当事業年度末における見積額を計上している。
ロ 東北地方太平洋沖地震による損失等に係るもの
東北地方太平洋沖地震により被災した資産の復旧等に要する費用または損失に備えるため、当事業年度末における見積額を計上している。
なお、当社の原子力発電所、火力発電所及び流通設備等は甚大な被害を受け、その被害額の全容の把握が困難であることなどから、現時点の合理的な見積りが可能な範囲における概算額を計上している。
平成23年5月20日開催の取締役会において、福島第一原子力発電所1〜4号機の廃止について決定したため、当事業年度に廃止に関する費用または損失の合理的な見積額を計上している。

災害損失引当金に含まれる主な費用または損失の計上方法等については以下のとおりである。
@ 原子炉等の冷却や放射性物質の飛散防止等の安全性の確保等に要する費用または損失
福島第一原子力発電所の事故の収束に向け、原子炉及び使用済燃料プールの安定的冷却状態を確立し、放射性物質を抑制するための費用または損失を計上しており、その具体的な内容は、燃料域上部までの格納容器への注水、原子炉熱交換機能の回復、使用済燃料プールへの注水、放射性物質で汚染された水(滞留水)の保管・除染処理、原子炉等からの燃料取出し等に係る見積額である。
これらのうち、平成23年5月17日に公表した「福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋」における当面の取組みのロードマップに掲げた目標であるステップ1(放射線量が着実に減少傾向となっている)及びステップ2(放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている)に係る費用または損失については、具体的な目標期間と個々の対策の内容に基づく見積額を計上している。
一方、具体的なロードマップを示していない中長期的課題に係る費用または損失については、工事等の具体的な内容を現時点では想定できず、通常の見積りが困難であることから、海外原子力発電所事故における実績額に基づく概算額を計上している。

A 福島第一原子力発電所1〜4号機の廃止に関する費用または損失のうち加工中等核燃料の処理費用
今後の使用が見込めない加工中等核燃料に係る処理費用について、使用済燃料再処理等準備引当金の計上基準に準じた見積額を計上している。
なお、装荷核燃料に係る処理費用は使用済燃料再処理等準備引当金に含めて表示している。

B 福島第一原子力発電所5・6号機及び福島第二原子力発電所の原子炉の安全な冷温停止状態を維持するため等に要する費用または損失
被災した福島第一原子力発電所5・6号機及び福島第二原子力発電所の今後の取扱いについては未定であるものの、原子炉の安全な冷温停止状態を維持するため等に要する費用または損失は、新潟県中越沖地震により被災した柏崎刈羽原子力発電所の復旧等に要する費用または損失と同程度と判断し、これに基づく見積額を計上している。

C 火力発電所の復旧等に要する費用または損失
被災した火力発電所の復旧等に要する費用または損失に備えるため、当事業年度末における見積額を計上している。資産の損壊状況の把握が困難であるものについては、再取得価額に基づく除却損相当額を見積り、その損失見積額を計上している。

(追加情報)
・当事業年度末における災害損失引当金残高の内訳
イ 新潟県中越沖地震による損失等に係るもの 56,495百万円
ロ 東北地方太平洋沖地震による損失等に係るもの 772,887百万円
うち@ 原子炉等の冷却や放射性物質の飛散防止等の安全性の確保等に要する費用または損失 425,000百万円
  A 福島第一原子力発電所1〜4号機の廃止に関する費用または損失のうち加工中等核燃料の処理費用 4,472百万円
  B 福島第一原子力発電所5・6号機及び福島第二原子力発電所の原子炉の安全な冷温停止状態を維持するため等に要する費用または損失 211,825百万円
  C 火力発電所の復旧等に要する費用または損失 49,710百万円
  D その他 81,879百万円
  合計 829,382百万円

・福島第一原子力発電所1〜4号機の安全性の確保等に要する費用または損失のうち中長期的課題に係る費用または損失の見積り
原子力発電所の廃止措置の実施にあたっては予め原子炉内の燃料を取出す必要があるが、その具体的な作業内容等の決定は安定的冷却状態が確立し原子炉内の状況を確認した後の判断となる。したがって、平成23年5月17日に公表した「福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋」において具体的なロードマップを示していない中長期的課題に係る費用または損失については、燃料取出しに係る費用も含め変動する可能性があるものの、現時点の合理的な見積りが可能な範囲における概算額を計上している。

4.原子力発電施設解体費の計上方法
「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(昭和32年6月10日 法律第166号)に規定された特定原子力発電施設の廃止措置について、「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第21号 平成20年3月31日)第8項を適用し、「原子力発電施設解体引当金に関する省令」(経済産業省令)の規定に基づき、原子力発電施設解体費の総見積額を発電設備の見込運転期間にわたり、原子力の発電実績に応じて費用計上する方法によっている。また、総見積額の現価相当額を資産除去債務に計上している。
なお、被災した福島第一原子力発電所1〜4号機については、平成23年5月20日開催の取締役会においてその廃止を決定したため、当事業年度において、原子力発電施設解体費の総見積額と原子力の発電実績に応じて計上した累計額との差額については、災害特別損失に計上している。

(追加情報)
・福島第一原子力発電所1〜4号機の解体費用の見積り
被災状況の全容の把握が困難であることから今後変動する可能性があるものの、現時点の合理的な見積りが可能な範囲における概算額を計上している。

5.消費税等の会計処理
消費税及び地方消費税の会計処理は、税抜方式によっている。

6.重要な会計方針に係る事項の変更
当事業年度から、「資産除去債務に関する会計基準」(企業会計基準第18号 平成20年3月31日)及び「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第21号 平成20年3月31日)を適用している。また、これらの会計基準等の適用に伴い、「原子力発電施設解体引当金に関する省令」(経済産業省令)が改正されている。
これにより、当事業年度の営業利益、経常利益はそれぞれ2,088百万円減少し、税引前当期純損失は58,756百万円増加している。また、当会計基準等の適用開始による資産除去債務の計上額は、754,266百万円(うち、原子力発電施設解体引当金からの引継額は510,010百万円)である。

7.表示方法の変更
当事業年度における「為替差損益」(為替差益)は、金額的重要性が高いため、区分掲記している。なお、前事業年度に「雑収益」に含めて表示していた「為替差益」は248百万円である。


【貸借対照表に関する注記】
1.担保に供している資産及び担保に係る債務
総財産を社債及び株式会社日本政策投資銀行借入金の一般担保に供している。
社債(1年以内に償還すべき金額を含む):5,044,082百万円
うち内債:4,785,600百万円
外債:188,482百万円
金融商品に関する会計基準における経過措置を適用した債務履行引受契約により債務の履行を委任した社債:70,000百万円
株式会社日本政策投資銀行借入金(1年以内に返済すべき金額を含む):361,099百万円

2.有形固定資産の減価償却累計額:21,146,617百万円

3.保証債務等
(1)保証債務
イ 以下の会社の金融機関からの借入金に対する保証債務
日本原燃株式会社:271,448百万円
日立熱エネルギー株式会社:18百万円
 当社以外にも連帯保証人がいる保証債務であり、保証人間の契約に基づく当社負担額は13百万円である。
相馬共同火力発電株式会社:1,049百万円
原燃輸送株式会社:134百万円
東電不動産株式会社:109百万円
森ヶ崎エナジーサービス株式会社:132百万円
Tokyo Timor Sea Resources Inc.:3,442百万円
TEPCO Darwin LNG Pty Ltd:4,273百万円
伊勢原エネルギーサービス株式会社:351百万円
Tokyo Electric Power Company International Paiton I B.V.:5,342百万円
リサイクル燃料貯蔵株式会社:8,240百万円
TeaM Energy Corporation:5,636百万円
P.T.Paiton Energy:968百万円
SKZ−U LLP:475百万円
ロ 日本原燃株式会社が発行している社債に対する保証債務:9,597百万円
ハ ITM O&M Company LimitedのArabian Power Company Private Joint Stock Companyとの運転保守契約の履行に対する保証債務:498百万円
二 TeaM Sual CorporationのNational Power Corporationとの売電契約の履行に対する保証債務:1,247百万円
ホ KEPCO Ilijan CorporationのNational Power Corporationとの売電契約の履行に対する保証債務:898百万円
ヘ P.T.Paiton EnergyのP.T.PLN(Perserp)との長期売電契約における損害賠償義務の履行に対する保証債務:157百万円
ト 株式会社駒込SPCの金融機関との履行保証保険契約の履行に対する保証債務:50百万円
チ TM Energy(Australia)Pty LtdのTN Power  Pty Ltd及びTarong Energy Corporation Limitedとの事業譲渡契約の履行に対する保証債務:14,872百万円
リ Tokyo Electric Power Company International Paiton I B.V.の金融機関との金利スワップ契約の履行に対する保証債務:1,217百万円
ヌ PT IPM Operations and Maintenance IndonesiaのP.T.Paiton Energyとの運転保守契約の履行に対する保証債務:556百万円
ル P.T.Paiton Energyの三菱重工業株式会社、三井物産株式会社及び東亜建設工業株式会社とのプラント建設請負契約における損害賠償義務の履行に対する保証債務:2,445百万円
ヲ Tokyo Electric Power Company International B.V.の出資の履行に対する保証債務:16,272百万円
ワ 従業員の持ち家財形融資等による金融機関からの借入金に対する保証債務:242,236百万円
合計:591,673百万円
 うち、18百万円は当社以外にも連帯保証人がいる保証債務であり、保証人間の契約に基づく当社負担額は13百万円である。

(2)偶発債務
イ 社債の債務履行引受契約に係る偶発債務
次の社債については、下記金融機関との間に金融商品に関する会計基準における経過措置を適用した債務履行引受契約を締結し、債務の履行を委任した。しかし、社債権者に対する当社の社債償還義務は、社債償還完了時まで存続する。
銘柄:東京電力第426回社債  債務履行引受金融機関:株式会社三井住友銀行  期末残高:70,000百万円

ロ 原子力損害の賠償に係る偶発債務
東北地方太平洋沖地震により被災した福島第一原子力発電所の事故等に関する原子力損害について、わが国の原子力損害賠償制度上、当社は原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年6月17日 法律第147号)の要件を満たす場合、賠償責任を負うこととされている。また、その賠償額は原子力損害賠償紛争審査会が今後定める指針に基づいて算定されるなど、現時点では賠償額を合理的に見積ることができないことなどから、計上していない。
一方、政府より「東京電力福島原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する政府の支援の枠組みについて(平成23年5月13日 原子力発電所事故経済被害対応チーム 関係閣僚会合決定)」が公表された。この枠組みでは、当社は被害を受けられた皆さまに対し、新設される支援組織(以下「機構」という)から必要な資金の援助を受け、責任をもって補償を行うこととされている。また、電力の安定供給の維持及び金融市場の安定等を考慮し、当社は機構に対し毎年の事業収益等を踏まえて設定される特別な負担金を支払うこととされている。当社は徹底した経営合理化による費用削減や資金確保に取り組み、この枠組みの中で賠償責任を果たしていく予定である。

4.関係会社に対する金銭債権及び金銭債務
 長期金銭債権:105,977百万円  短期金銭債権:9,433百万円
 長期金銭債務:38,812百万円  短期金銭債務:205,062百万円

5.損益計算書に記載されている附帯事業に係る固定資産の金額
エネルギー設備サービス事業
専用固定資産:5,072百万円 他事業との共用固定資産の配賦額:11百万円 合計額:5,084百万円
不動産賃貸事業
専用固定資産:50,692百万円 他事業との共用固定資産の配賦額:2,585百万円 合計額:53,278百万円
ガス供給事業
専用固定資産:4,173百万円 他事業との共用固定資産の配賦額:9,059百万円 合計額:13,232百万円

6.会社法以外の法令の規定による引当金
(1)渇水準備引当金
渇水による損失に備えるため、電気事業法第36条の規定により、「渇水準備引当金に関する省令」(経済産業省令)に基づき計上している。

(2)原子力発電工事償却準備引当金
原子力発電所の運転開始直後に発生する減価償却費の負担を平準化するため、電気事業法第35条の規定により、「原子力発電工事償却準備引当金に関する省令」(経済産業省令)に基づき計上している。

【損益計算書に関する注記】 
関係会社との取引高
営業取引による取引高  費用:703,178百万円  収益:18,377百万円
営業取引以外の取引による取引高  2,284百万円 

【株主資本等変動計算書に関する注記】
当事業年度の末日における自己株式の数  2,894,627株

【税効果会計に関する注記】
繰延税金資産の発生の主な原因は、災害損失引当金、資産除去債務、退職給付引当金であり、繰延税金負債の発生の主な原因は、資産除去債務相当資産である。
なお、将来減算一時差異と将来加算一時差異の解消見込額を相殺した純額の繰延税金資産から同額の評価性引当額を控除しているため、繰延税金資産及び繰延税金負債は貸借対照表に計上していない。

【リースにより使用する固定資産に関する注記】
貸借対照表に計上した固定資産のほか、原子力発電設備や業務設備等の一部については、所有権移転外ファイナンス・リース契約にて使用している。

【関連当事者との取引に関する注記】
子会社等
会社等の名称又は氏名:日本原燃株式会社
事業の内容又は職業:ウラン濃縮事業、再処理事業、廃棄物管理事業、廃棄物埋設事業
議決権等の所有(非所有)割合:(所有)直接28.6%
関連当事者との関係:ウランの濃縮、使用済燃料の再処理、高レベル放射性廃棄物の一時保管及び低レベル放射性廃棄物の埋設の委託
(役員の兼任等)兼任1人、転籍5人
取引の内容:債務保証(注)
取引金額:281,045百万円
科目:−
期末残高:−

取引条件及び取引条件の決定方針等
 (注)日本原燃株式会社に対する保証債務は、金融機関からの借入金及び社債に対して保証したものである。

【1株主当たり情報に関する注記】
1.1株当たり純資産額:788円48銭
2.1株当たり当期純損失:853円33銭

【その他の注記】
1.災害特別損失
東北地方太平洋沖地震により被災した資産の復旧等に要する費用または損失を計上している。
当社の原子力発電所、火力発電所及び流通設備等が甚大な被害を受け、その被害額の全容の把握が困難であることなどから、現時点の合理的見積りが可能な範囲における概算額を計上しており、その内容は、原子炉等の冷却や放射性物質の飛散防止等の安全性の確保等に要する費用または損失、福島第一原子力発電所1〜4号機の廃止に関する費用または損失である。
なお、平成23年5月20日開催の取締役会において、福島第一原子力発電所1〜4号機の廃止及び同発電所7・8号機の増設計画の中止について決定したため、当事業年度に廃止及び中止に関する費用または損失を計上している。

(1)災害特別損失に含まれる費用または損失の計上方法等
イ 原子炉等の冷却や放射性物質の飛散防止等の安全性の確保等に要する費用または損失
福島第一原子力発電所の事故の収束に向け、原子炉及び使用済燃料プールの安定的冷却状態を確立し、放射性物質を抑制するための費用または損失を計上しており、その具体的な内容は、燃料域上部までの格納容器への注水、原子炉熱交換機能の回復、使用済燃料プールへの注水、放射性物質で汚染された水(滞留水)の保管・除染処理、原子炉等からの燃料取出し等に係る見積額である。
これらのうち、平成23年5月17日に公表した「福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋」における当面の取組みのロードマップに掲げた目標であるステップ1(放射線量が着実に減少傾向となっている)及びステップ2(放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている)に係る費用または損失については、具体的な目標期間と個々の対策の内容に基づく見積額を計上している。
一方、具体的なロードマップを示していない中長期的課題に係る費用または損失については、工事等の具体的な内容を現時点では想定できず、通常の見積りが困難であることから、海外原子力発電所事故における実績額に基づく概算額を計上している。

ロ 福島第一原子力発電所1〜4号機の廃止に関する費用または損失
@ 被災した原子力発電設備について、被災状況から今後の復旧が見込めない設備であると合理的に判断できるものの、その資産の特定が困難であるものについては、固定資産の減損処理に基づく損失額を計上している。

A 原子力発電施設の解体費用について、「原子力発電施設解体引当金に関する省令」(経済産業省令)に基づく総見積額と発電実績に応じて計上した累計額との差額を計上している。

B 装荷核燃料及び加工中等核燃料のうち、今後の使用が見込めない核燃料に係る損失について、評価損を計上するとともに、当該核燃料の処理費用について、使用済燃料再処理等準備費に準じて計上している。

ハ 福島第一原子力発電所5・6号機及び福島第二原子力発電所の原子炉の安全な冷温停止状態を維持するため等に要する費用または損失
被災した福島第一原子力発電所5・6号機及び福島第二原子力発電所の今後の取扱いについては未定であるものの、原子炉の安全な冷温停止状態を維持するため等に要する費用または損失は、新潟県中越沖地震により被災した柏崎刈羽原子力発電所の復旧等に要する費用または損失と同程度と判断し、これに基づく見積額を計上している。

二 福島第一原子力発電所7・8号機の増設計画の中止に伴う損失
福島第一原子力発電所7・8号機の増設計画の中止について、平成23年5月20日開催の取締役会において決定したため、当事業年度に当該増設計画に係る建設仮勘定の額を減損損失として災害特別損失に含めて計上している。

ホ 火力発電所の復旧等に要する費用または損失
被災した火力発電所の復旧等に要する費用または損失を計上しており、資産の損壊状況の把握が困難であるものについては、再取得価額に基づく除却損相当額を見積り、その損失見積額を計上している。
なお、当該損失計上額は、一部を除き発生見込額である。

(2)災害特別損失の主な内訳
イ 原子炉等の冷却や放射性物質の飛散防止等の安全性の確保等に要する費用または損失:426,298百万円
ロ 福島第一原子力発電所1〜4号機の廃止に関する費用または損失:207,017百万円
うち@ 原子力発電設備に関する減損損失:101,692百万円
  A 原子力発電施設の解体費用:45,842百万円
B 核燃料の損失:44,855百万円
  核燃料の処理費用:14,627百万円
ハ 福島第一原子力発電所5・6号機及び福島第二原子力発電所の原子炉の安全な冷温停止状態を維持するため等に要する費用または損失:211,825百万円
二 福島第一原子力発電所7・8号機の増設計画の中止に伴う損失:39,360百万円
ホ 火力発電所の復旧等に要する費用または損失:49,724百万円
ヘ その他:83,312百万円
合計:1,017,538百万円

(3)災害特別損失に含まれる減損損失
イ 資産のグルーピングの方法
@ 電気事業に使用している固定資産は、発電から販売まですべての資産が一体となってキャッシュ・フローを生成していることから、廃止を決定し代替的な投資も予定されていない資産のうち重要なものを除き全体を1つの資産グループとしている。

A 附帯事業に使用している固定資産は、原則として事業毎、地点毎に1つの資産グループとしている。

B それ以外の固定資産については、原則として個別の資産毎としている。

ロ 減損損失を認識した資産または資産グループ
・福島第一原子力発電所1〜4号機
場所:福島県双葉郡大熊町
種類:建物、構築物、機械装置、建設仮勘定等
減損損失:101,692百万円
・福島第一原子力発電所7・8号増設工事
場所:福島県双葉郡大熊町及び双葉町
種類:建設仮勘定
減損損失:39,360百万円
固定資産の種類ごとの内訳
 建物:2,335百万円
構築物:2,103百万円
機械装置:90,169百万円
建設仮勘定:45,241百万円
その他:1,204百万円

ハ 減損損失の認識に至った経緯
福島第一原子力発電所1〜4号機の廃止及び同発電所7・8号機の増設計画の中止の決定に伴い、投資の回収が困難であるため、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として特別災害特別損失に含めて計上している。

二 回収可能価額の算定方法
回収可能価額は正味売却価額を使用しており、正味売却価額については、他への転用や売却が困難であるため零円としている。


<参考>
東京電力福島原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する政府の支援の枠組みについて

平成23 年5 月13 日
原子力発電所事故経済被害対応チーム
関係閣僚会合決定

東京電力福島原子力発電所事故(以下「事故」)については、4月17 日に東京電力株式会社(以下「東京電力」)が「事故の収束に向けた道筋」を公表している。政府は、東京電力に対し、この道筋の着実かつ極力早期の実施を求めているところであり、また、定期的にフォローアップを行い、作業の進捗確認と必要な安全性確認を行うこととしている。政府としては、一日も早く炉心を冷却し安定した状態を実現すべく、国内外のあらゆる知見、技術等得られるすべての力を結集し、万全の対策を講ずる。
事故によって住民や事業者の方々に大きな損害が発生していることに対し、今般、東京電力が、原子力損害の賠償に関する法律(以下「原賠法」)に基づく公平かつ迅速な賠償を行う旨の表明があった。また、東日本大震災による東京電力福島原子力発電所の事故等により資金面での困難を理由として、政府による支援の要請があった。
この要請に関し、第一に、賠償総額に事前の上限を設けることなく、迅速かつ適切な賠償を確実に実施すること、第二に、東京電力福島原子力発電所の状態の安定化に全力を尽くすとともに、従事する者の安全・生活環境を改善し、経済面にも十分配慮すること、第三に、電力の安定供給、設備等の安全性を確保するために必要な経費を確保すること、第四に、上記を除き、最大限の経営合理化と経費削減を行うこと、第五に、厳正な資産評価、徹底した経費の見直し等を行うため、政府が設ける第三者委員会の経営財務の実態の調査に応じること、第六に、全てのステークホルダーに協力を求め、とりわけ、金融機関から得られる協力の状況について政府に報告を行うこと、について東京電力に確認を求めたところ、これらを実施することが確認された。
政府として、第一に、迅速かつ適切な損害賠償のための万全の措置、第二に、東京電力福島原子力発電所の状態の安定化及び事故処理に関係する事業者等への悪影響の回避、そして第三に、国民生活に不可欠な電力の安定供給、という三つを確保しなければならない。
このため、政府は、これまで政府と原子力事業者が共同して原子力政策を推進してきた社会的責務を認識しつつ、原賠法の枠組みの下で、国民負担の極小化を図ることを基本として東京電力に対する支援を行うものとする。
政府は、今回の事態を踏まえ、将来にわたって原子力損害賠償の支払等に対応できる枠組みを設けることとし、東京電力以外の原子力事業者にも参加を求めることとする。
また、電力事業形態のあり方等を含むエネルギー政策の見直しの検討を進め、所要の改革を行うこととする。今回の支援の枠組みが、この検討・改革に支障を生じさせないようにするとともに、一定期間後に、被害者救済に遺漏がないか、電力の安定供給が図られているか、金融市場の安定が図られているか、等について検討を行い、必要な場合には追加的な措置を講ずるものとする。

(具体的な支援の枠組み)
政府の東京電力に対する支援の枠組みとして、次のように原子力事業者を対象とする一般的な支援の枠組みを策定し(別添図参照)、速やかに所要の法案を国会に提出することを目指す。
1.原子力損害が発生した場合の損害賠償の支払等に対応する支援組織(機構)を設ける。
2.機構への参加を義務づけられる者は原子力事業者である電力会社を基本とする。参加者は機構に対し負担金を支払う義務を負うこととし、十分な資金を確保する。負担金は、事業コストから支払を行う。
3.機構は、原子力損害賠償のために資金が必要な原子力事業者に対し援助(資金の交付、資本充実等)を行う。援助には上限を設けず、必要があれば何度でも援助し、損害賠償、設備投資等のために必要とする金額のすべてを援助できるようにし、原子力事業者を債務超過にさせない。
4.政府または機構は、原子力損害の被害者からの相談に応じる。また、機構は、原子力事業者からの資産の買取りを行う等、円滑な賠償のために適切な役割を果たす。
5.政府は、機構に対し交付国債の交付、政府保証の付与等必要な援助を行う。
6.政府は、援助を行うに先立って原子力事業者からの申請を受け、必要な援助の内容、経営合理化等を判断し、一定期間、原子力事業者の経営合理化等について監督(認可等)をする。
7.原子力事業者は、機構から援助を受けた場合、毎年の事業収益等を踏まえて設定される特別な負担金の支払を行う。
8.機構は、原子力事業者からの負担金等をもって必要な国庫納付を行う。
9.原子力事業者が負担金の支払により電力の安定供給に支障が生じるなど例外的な場合には、政府が補助を行うことができる条項を設ける。