連結計算書類に係る会計監査人の会計監査報告

独立監査人の監査報告書
平成23年5月24日
東京電力株式会社
取締役会 御中
新日本有限責任監査法人
指定有限責任社員・業務執行社員  公認会計士  池上  玄
指定有限責任社員・業務執行社員  公認会計士  岡村 俊克
指定有限責任社員・業務執行社員  公認会計士  春日 淳志

 当監査法人は、会社法第444条第4項の規定に基づき、東京電力株式会社の平成22年4月1日から平成23年3月31日までの連結会計年度の連結計算書類、すなわち、連結貸借対照表、連結損益計算書、連結株主資本等変動計算書及び連結注記表について監査を行った。この連結計算書類の作成責任は経営者にあり、当監査法人の責任は独立の立場から連結計算書類に対する意見を表明することにある。
 当監査法人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行った。監査の基準は、当監査法人に連結計算書類に重要な虚偽の表示がないかどうかの合理的な保証を得ることを求めている。監査は、試査を基礎として行われ、経営者が採用した会計方針及びその適用方法並びに経営者によって行われた見積りの評価も含め全体としての連結計算書類の表示を検討することを含んでいる。当監査法人は、監査の結果として意見表明のための合理的な基礎を得たと判断している。
 当監査法人は、上記の連結計算書類が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、東京電力株式会社及び連結子会社から成る企業集団の当該連結計算書類に係る期間の財産及び損益の状況をすべての重要な点において適正に表示しているものと認める。

追記情報
1.「継続企業の前提に関する注記」に記載されているとおり、東北地方太平洋沖地震により被災した福島第一原子力発電所の事故等に関する原子力損害について、わが国の原子力損害賠償制度上、会社は原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年6月17日 法律第147号。以下「原賠法」という)の要件を満たす場合、賠償責任を負うこととされている。従って、会社グループの財務体質が大幅に悪化し継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在している。
会社は原子力事故の収束と安全性の確保、電力の安定供給を確保するための設備投資、高騰する化石燃料の手当等に相当な資金が必要となる一方で、社債の発行及び金融機関からの借入等の資金調達も極めて厳しい状況にあることを踏まえ、こうした補償を確実に実施するために、原子力経済被害担当大臣に対し原賠法第16条に基づく国の援助の枠組みの策定をお願いした。
それに対して、政府より「東京電力福島原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する政府の支援の枠組みについて(平成23年5月13日 原子力発電所事故経済被害対応チーム 関係閣僚会合決定)」が公表された。この枠組みでは、会社は新設される支援組織(以下「機構」という)から必要な資金の援助を受け、責任をもって補償を行うこととされている。また、電力の安定供給の維持及び金融市場の安定等を考慮し、会社は機構に対し毎年の事業収益等を踏まえて設定される特別な負担金を支払うこととされている。会社は徹底した経営合理化による費用削減や資金確保に取り組み、この枠組みの中で賠償責任を果たしていく予定である。しかし、枠組みの詳細については今後の検討に委ねられていることや、立法化については今後国会での審議が必要となることを踏まえると、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる。
連結計算書類は継続企業を前提として作成されており、このような重要な不確実性の影響は連結計算書類に反映されていない。

2.「連結貸借対照表に関する注記3.保証債務等 (2)偶発債務 ロ 原子力損害の賠償に係る偶発債務」に記載されているとおり、東北地方太平洋沖地震により被災した福島第一原子力発電所の事故等に関する原子力損害について、わが国の原子力損害賠償制度上、会社は原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年6月17日 法律第147号)の要件を満たす場合、賠償責任を負うこととされている。また、その賠償額は原子力損害賠償紛争審査会が今後定める指針に基づいて算定されるなど、現時点では賠償額を合理的に見積ることができないことなどから、計上していない。

3.「連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項に関する注記3.会計処理基準に関する事項 (3)重要な引当金の計上基準 二 災害損失引当金の追加情報 ・福島第一原子力発電所1〜4号機の安全性の確保等に要する費用または損失のうち中長期的課題に係る費用または損失の見積り」に記載されているとおり、原子力発電所の廃止措置の実施にあたっては予め原子炉内の燃料を取出す必要があるが、その具体的な作業内容等の決定は安定的冷却状態が確立し原子炉内の状況を確認した後の判断となる。したがって、平成23年5月17日に公表した「福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋」において具体的なロードマップを示していない中長期的課題に係る費用または損失については、燃料取出しに係る費用も含め変動する可能性があるものの、現時点の合理的な見積りが可能な範囲における概算額を計上している。

4.「連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項に関する注記3.会計処理基準に関する事項 (4)原子力発電施設解体費の計上方法の追加情報 ・福島第一原子力発電所1〜4号機の解体費用の見積り」に記載されているとおり、福島第一原子力発電所1〜4号機の解体費用の見積りについては、被災状況の全容の把握が困難であることから今後変動する可能性があるものの、現時点の合理的な見積りが可能な範囲における概算額を計上している。

5.「連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項の変更」に記載されているとおり、会社は当連結会計年度から「資産除去債務に関する会計基準」及び「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」を適用している。


 会社と当監査法人又は業務執行社員との間には、公認会計士法の規定により記載すべき利害関係はない。
以上