1998年8月に事業所長の辞令により京都へ赴任することになった。京都というと聞こえは良いがエリアは亀岡市・長岡京市・向日市などの周辺とそれらの市に接続した京都市西地区を担当する事になった。本社からの転勤組で所長の中では年下で有った事もあり、京都では難しいというエリアであった。また、京都への転勤そのものが折角築きあげた能力開発体系への弾圧で有り、厄介払いという色が濃い事もあったので気が重かった。しかも赴任先の京都支店長は社内でも気難しいと評判の人物であり、私とのトラブルは必至という見方で赴任先が決まったとの噂もあった。とにかく社長が交代するとの噂と私が社長室から放出される直前に役員含みで着任した社長室長がその京都出身という事からも有り得る話かと思いつつ着任した。
京都支店長は数々の功績を引っ提げている人物である。その功績の秘密を全国営業会議で発表された時の本社担当を私がした。発表内容は展示場や不動産販売で待ちの営業でなく、100%紹介受け販売を目指す、その為には協力工事店を中心としてエリアで仕事を共にする仲間を集いサークル化するという斬新な物であった。その発表を聞いた時もワクワクとした思いが体から湧いてきたが、京都ではその考えをよりパワフルに実践しつつあった。まさにエリアマーケティングの幕開けという感じであった。そんな事から着任して業務に就いてからは不安や不信な気持ちは吹き飛んでいった。一番小さな営業所ではあったが一人当たりで支店内そして本部内でトップとなり契約新記録更新が続いた。半年後には事業所の売上高で他の営業所に大きく差を付ける程になっていた。
そんな事も有り支店内の業務指導も支店長の命を受けて担当する様になった。これには反発する者も多かった。組織とは不思議な物でどんなに正しい事でも直属上司から叱責されるなら我慢出来ても、そうでなければ不満となり、蓄積していく様がまざまざと分かるほどであった。支店内も支店長を中心とした改革派と転勤した元支店長に通じた不満分子に分かれ始めた。特に古参社員の反発行動は支店内の業績の陰りに悪影響を与えていたが、支店長の改革精神は留まる事はなかった。次々と新しい方策や方針が打ち出され京都支店は他には例の無い様な支店として面白いほどに変革していった。
その頃全社は新社長の思う様に伸びてはいなかった。そんな折不良資産を精算する意味で土地の特別損失がなされていた。現実的に当営業所でも酷い土地が散見されていた。例えば酷い北斜面とか、角地ではあるが敷地内に2mの段差があり、隣接地との関係で有効面積が半分以下というものが大半であった。購入判断ミスと言うほか言葉が見つからないほどである。特に酷かったのは4,500万円の売値の土地で8割が沼の中に沈んでいる土地が2区画もあったのである。土地としての価値がゼロ、これを如何に処分するのかが所長としての大仕事であった。
そんな折、ある社員が販売のアイディアを持ち込んでくれた。それは不動産会社に50万円で販売し当社の設計による高架台をその業者が施工し、当社の検査基準で合格すればその請負契約を交わし建築をするという物であった。実現可能なのかは不安もあったが勢いのあった時でもあり、この特別損失を逃せば好機はないと思い稟議書に詳細を記載し提出した。支店や本部ではこの稟議書に対するクレームは無く、むしろ支援の言葉を添えてあった。本社サイドではこの土地を購入に決済した側であり、異議や反対の意見が横行したが支店長がこれらを全て跳ね除け社長決裁まで取り付けてくれた。これが功を奏してか期末には抱えていた不良資産は一掃出来たのであった。
期が変わり事態は一変した。急に本部長が支店長を呼び出し、50万円土地の販売価格設定と建物契約でクレームを付けてきた。本部長室へ私も呼び出され反論出来ないほどの剣幕で捲し立てられた。この件に関係の無い事まで話が言及したのでなす術は無かった。最後に本部長命としてこうしろとの指示があった。それは土地販売後の所有権移転済の現段階では到底無理な話ではあったが、言われるがまま「分かりました」と答えてしまった。ところがその返事の否やで、支店長が本部長に対して「ちょっと待て!こんな無理な話があるか?」と喰って掛ったのである。「そんな後付けで駄目な理由を着け、業務を捻じ曲げたら信用して一生懸命動いた社員が迷惑する。」本社に長くいた私にとってそれは驚きの行動であった。その一言で本部長の姿勢は急変し、支店長に何とかその様に頼めないかと敬語で頼む様な口調になっていた。出来ない物は出来ないと私を連れて本部長室を後にしたのは数分後であった。そして「気にするな、後は頼む」と言われた時、これが皆から敬愛される存在の小川邦夫さんの所以だと思えた。
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